旧李王家東京邸

更新日:2024年02月06日

華麗さと格調の高さを誇る

旧李王家東京邸(紀尾井町1-2) ※通常、一般公開は行っておりません

ブロックの門があり、奥にチューダーゴシック様式の建物の赤坂プリンスクラシックハウスの全体を写した写真

 どこから見ても絵になる現赤坂プリンスクラシックハウス。ここは、江戸時代には紀州徳川家の大名屋敷、明治時代には北白川宮家の皇族宮廷があった場所です。その後、韓国併合時に設立された李王家の東京邸として、1930年(昭和5年)建てられたのが、現存する建物です。

 それだけ聞くと、華やかで幸福な生活が営まれていたかの如く素晴らしい時を感じさせる場とも思われます。しかし、北白川宮家は当主三代がマラリア・交通事故・訓練中の事故死という不慮の死を遂げており、李王家も後に王族の身分を失うという悲劇の歴史が繰り広げられた場でもありました。

 そのようなミステリアスな歴史的背景を持ちながらも、やはり皇室邸宅として、近代建築の威厳すら感じさせる重厚なチューダーゴシック様式の建物外観は見事で、当時快適で豊かな生活が送れるようにと建てられたものであることが、随所に見て取れます。
 中でも特筆すべきは、建物内部にも随所に皇室邸宅ならではの優美な内装や家具が配されている点でしょう。大客間の壁にある織物には、「延寿華紋(えんじゅかもん)」と称する植物の実を多く配置した豊穣とおめでたいことを示す寿と伸び広がる菱紋の柄がみられます。そして建設当初から同じく大客間に置かれていた大・小の茶卓子(テーブル)には、丁寧に幕板の裏にまで目隠し板が張られており、昔ながらの日本人の繊細な物づくりへのこだわりを見ることができます。また、見事なネオクラシック様式の飾り棚も、昭和初期の高級家具として文化的価値を有したものです。

 総じて、格調高い設えで、主亡きあとも、きちんと状態良く留められていることは、今後の文化財の保護の指標としても重要で、見逃さずにおきたいものです。

建物の中心にある、緑の芝生といろいろな植物で飾られた中庭の写真

中庭

内観と調度品

大きなテーブルの奥の壁に飾られた織物の写真
窓ガラスがある大客間の絨毯の上に置かれた丸いテーブルとソファーを写した写真
大きな窓の横にある白いネオクラシック様式の飾り棚の全体を写した写真

撮影協力:株式会社西武リアルティソリューションズ